正社員を過剰に保護するから派遣にしわ寄せが行く

前回書いた記事のコメントに返信させていただきます。

私は派遣や期間工を安月給で雇い、会社の都合でいとも簡単に労働者をクビにするキヤノンも悪いことは悪いのですが、しかしそれよりも国内の工場を閉鎖して中国へ工場を移転した富士フイルムオリンパスの方がもっと悪いのではないかと書きました。キヤノンばかり非難されて、富士フイルムオリンパスが非難されない社会の風潮を変だと思っていたからです。日本人を雇用することを止めてしまった企業こそもっと非難されてしかるべきだと言いたかったのです。

私はもちろん派遣や期間工の人に同情しています。正社員と工場内で同じような仕事をしていながら、

  • 給料は安い
  • 社員食堂は割高
  • いつ解雇されるかわからない

このような待遇に怒りを持つのは当然です。無差別殺人事件を起こした加藤容疑者のやったことは同意できませんが、彼が関東自動車日研総業に怒りを覚えたことは納得できます。

私は雇用が不安定な派遣や期間工こそ正社員よりも高い給与を与えられるべきだと考えています。正社員は身分が安定しているのですから派遣や期間工よりも安い給与でも我慢すべきです。今の日本の現状は、派遣が給料も安くて身分も不安定という差別的状況に置かれていることは是正すべきだと思います。

しかし今の雨宮処凛氏などがやっている「派遣を一切合切禁止せよ」という運動は方向性を間違っていると思います。派遣を禁止された企業は、自社で求人広告を出して直接パートやアルバイトを雇うだけです。これでは正社員>派遣という差別的待遇が、正社員>パート・アルバイトとすり替わっただけでなんの解決にもなりません。

企業は派遣元に一括して人を派遣してもらうより雇用コストはかかりますが、正社員を採用するよりはマシなので、派遣をパート・アルバイトにどんどん切り替えるでしょう。

結局、企業が正社員を雇用したがらないからこの問題は延々と続くわけで、私はこの部分を改善しない限り、いつまでも正社員ばかりが保護されて、派遣やパートが泣きを見る構造は変わらないと思います。

企業が正社員を雇いたがらないのは、

  • クビにできない
  • 賃下げできない

と労働法制で守られているからです。

正社員が過剰に守られているから派遣にしわ寄せがいくわけで、私はもう少し正社員の解雇用件を簡便化しないと、この問題はいつまで経っても解決しないと思います。

  • 給料を半年分を渡せば、企業側の都合でいつでも解雇できる
  • 前年度より減益になれば、10%以内の賃下げであればいつでもできる

これぐらいしないと、正規雇用と非正規雇用の差別的状況は解決できないでしょう。しかしこの意見に賛同してくれる人はほとんどいないでしょうね。誰しも自らの既得権が侵されるのはいやですから、私は正社員だけが守られ、派遣が泣きを見る状況はこれからも半永久的に続くと思ってます。

経済協力開発機構OECD)は18日、日本で24歳までの若い世代の長期(一年以上の)失業率がOECD加盟30カ国平均を上回り、学生を除く若年層のほぼ3人に1人が派遣やパートタイムといった「非正規雇用」の状態にあるとの報告書を公表し、日本政府に雇用状況の改善を呼び掛けた。
報告書によると、2007年の日本における15〜24歳の長期失業率は21.3%と、OECD平均の19.6%を上回った。5年前に比べやや改善したものの、依然として10年前の18.2%を上回っており、「若者は定職確保が困難になっていると感じている」と分析している。
報告は、日本の派遣労働について「低い収入、低い社会保障水準で技能・キャリア開発の可能性もほとんどない」と厳しく指摘し、「若者を助けるために、日本にはもっとできることがあるのではないか」と強調している。


続きを書きました → レッテル貼りとかは本意ではないんです