新小作や新水呑み百姓が出現するのだろうか

派遣村のニュースが話題になっているが、これからも失業者はどんどん増えるだろう。今後これら失業者にどう職を与えるかが政府の課題になると思うが、農業や介護に人を割り振ったらいいのではないかという意見が散見される。

確かに農業は担い手が高齢化しているし、耕作放棄地も増加している。農業に新しい、若い人にやってもらうのはいい考えだと思うが、しかし彼らには資力がない。農地を購入する金がない。となると農業株式会社に入ってやってもらうか、農地を誰かから借りて耕作するしかない。小作農の出現である。

戦後の農地改革で地主の持つ土地は国により強制的に安値で買い上げられ、小作に格安で売却された。農地改革の是非はここでは置いておくが、この農地改革により「土地の所有者=耕作者(利用者)」という図式が確立された。

しかし今後、日本の農業に新しい担い手を入れる過程で、この農地の所有権の問題は大きな壁になるだろう。戦後の方程式「土地の所有者=耕作者(利用者)」が崩れるからだ。新小作や新水呑み百姓を認めてよいのだろうか。私は移行過程で一時的に認めてもよいとは思うが、その後にもう一度農地改革をやるべきだと思う。農地の所有者から強制的に国が土地を買い上げて、耕作者に格安で販売するのだ。

さらにいうと、耕作放棄地は国に返納すべきだと思う。耕作するからこそ国が特別な配慮で地主から土地を取り上げて分け与えてあげたのであって、耕作しないなら国に土地を返すのが筋であろう。そして返納された土地をまた国が耕作希望者に販売すればいい。

農地改革は憲法の財産権との絡みがあるが、幸いにして最高裁が現憲法下においても農地改革は違憲ではないとお墨付きを与えていてくれる。ならば、まずは耕作放棄地を強制的に安値で買い上げようではないか。そして希望者に売ってあげよう。なに? 選挙で負けるって? 農地改革はGHQの占領下で、しかも地主より小作の方が数的に多い状況下だからできたかもしれないが、いまや農地を持つ地主の方が多いので、農地を格安で買い上げるなんてできないかもしれないな。

と結局は農地改革は成立せず、私は新小作や新水呑み百姓が出現することになると思う。