製造業への派遣を禁止しても問題は解決しない

派遣労働の見直しが政治の焦点に浮上してきた。舛添厚生労働相は5日の記者会見で、製造業への派遣を規制すべきだとの考えを表明。民主党も独自の労働者派遣法改正案をまとめる方向で調整に入った。ただ、製造業派遣の禁止には政府・与党内や経済界に反対論が強い。

なにか問題が起こったときに、その問題の根本的原因を見極めずに安直に禁止措置をとっても、問題は何ら解決しない。舛添厚生労働相の製造業派遣の禁止提言は、後期高齢者医療制度見直し発言と同様、後先考えてないパフォーマンスに過ぎると思う。

製造業への派遣を禁止すればどうなるだろうか。企業は求人広告を出して、自社でパートやアルバイトを雇うだけである。2004年の製造業への派遣解禁以前はそうやっていた。製造業はどうしても暇なときと忙しいときで必要な人員の差が激しいので、忙しいときはパートを雇い、暇になれば解雇するだけである。しかし求人広告を出し、自社に採用担当を置き、パートに給料を払うのは労務管理コストがかかるので、派遣制度ができればそれを一括して派遣会社に丸投げしていただけである。

派遣を禁止すれば、昔のパート・アルバイト制度に戻るだけだ。暇になれば解雇されるのはなんの変わりもない。そもそも工場は稼働率の変動が激しく、それに併せて人員も増減するのが当然なのだから、解雇するなというのがおかしい。

解雇を禁止すべきだという発想を変えて、解雇されてもきちんと失業保険を受けられるようセーフティネットを整備するなど、再就職支援の政策に重点を置いた方がいいと思うな。