飲酒運転厳罰化で人が死ぬ

警察庁の統計でもここ数年轢き逃げ事件が増加している。理由は単純。飲酒運転を厳罰化したからだ。2001年の道路交通法改正で罰金30万に(呼気中アルコール濃度0.15mg以上0.25mg未満)、2007年の改正ではさらに50万まで引き上げられた。こうなると50万の罰金を払うのが嫌なやつはとにかく逃げようとする。酩酊して判断力が鈍くなっているので、なおさら冷静な判断ができない。捕まるかもしれないリスクなんか関係なしに、とにかく「逃げ」だ。2002年の厳罰化以降、てきめんに轢き逃げ事件が増え、また悪いことに検挙率も低下した。これは塗装が進化して塗膜片が落ちにくくなったこと、車種が多様化して絞り込みがしにくくなったことなどが理由としてあげられる。

大阪府富田林市で新聞販売店アルバイト東川達也さん(16)がはねられ、約5キロ先の河内長野市で遺体で見つかったひき逃げ事件で、自動車運転過失致死などの容疑で逮捕された大工市川保容疑者(41)の呼気からアルコール分が検出されていたことが17日、分かった。
市川容疑者は「酒を飲んでいたので、必死で逃げた」と供述しており、府警交通捜査課などは事件前後の行動などについて詳しく調べている。

今回のケースも梅田で3km引きずったケースもそうだが、轢かれた被害者を適正に処置すれば命は助かっていたと思われる。特に梅田でのケースは当初時速20〜30kmで当たっただけなので、命はあった。急いで救急車を呼べば軽傷で済んだだろう。今回の事故でもどのぐらいのスピードで轢いたかはわからないが、すぐ看護していれば助かったのではないか。
両方のケースとも、飲酒運転の厳罰化が被害者を殺したとも言える。もちろん、飲酒運転が減ったことでそれに起因する交通事故も減り、死亡する被害者も減ってはいるだろう。しかし一方で轢き逃げで死亡する犠牲者も増えている。はたしてどちらの数が多いのだろうか。統計的に興味がある。まあセンセーショナルな事件はどうしても過度に印象に残ってしまうため、社会全体で見れば 飲酒運転による死亡者減少数>轢き逃げによる死亡者増加数 だと思うが。
とはいえ、飲酒運転厳罰化が効果を果たしているといえども、罰金50万というのは適正な数字なのだろうか。どういう基準で定められたのかさっぱりわからない。諸外国の飲酒運転に対する刑罰はどうなのだろうか。日本ほど重いのだろうか。50万という罰金は、30kmオーバーのスピード違反で罰金7万と比べると異様に重い。国会議員の先生方にとっては50万ぐらいはした金だろうが、社会の末端で手取り15万で生活している人間にとっては非常に重い金額だろう。
そもそも酒を飲んだら車を運転しなきゃいいじゃないかといわれるだろうが、そんな冷静な判断ができる人間なら、きちんと代行業者を呼んで帰るだろう。末端のモラルのない人間にも、どう飲酒運転も轢き逃げも減らせるかが社会政策として大事なのであって、「飲酒運転を厳罰化しました、飲酒運転は減りましたが轢き逃げは増加しました」では政策として及第点だろう。両方とも上手く減らせなければ意味がない。私は飲酒運転の罰金は10万弱が適正だと思う。10万ぐらいならなんとか逃げずに踏みとどまるのではないか(ただのヤマ勘だが)。50万は重すぎる。これでは逃げるヤツは減らないだろう。あまりにも飲酒運転を厳罰化したために逆効果になっているとしか思えない。道路交通法を再考して欲しい。

ひき逃げの増加件数

ひき逃げは、1990年代まで年間8000件程度だったが、2000年以降急増し、昨年も死亡ひき逃げ188件を含む1万5500件に達している。
逃走の理由で最多の2割を占めるのは、飲酒運転隠しだ。
酒酔い運転による死傷事故については厳罰化が進み、01年には、最高刑が現在20年の危険運転致死傷罪が設けられた。
さらに昨年9月には、道路交通法が改正され、ひき逃げについても、最高刑が5年から10年に引き上げられた。酒酔い運転も3年が5年になった。
死亡ひき逃げの場合、危険運転致死罪を適用せずとも、最高で従来の2倍の懲役15年だ。

こういう意見もある

琉球大学教授 河野真治氏の意見だが。しかしそれにしても、ネット上で自らの実名や所属を明らかにしながら、Twitterで他人をアホ呼ばわりする神経が理解できない。

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