テロ支援国指定解除は米国の裏切りか?

国務省は11日、北朝鮮の核活動に関する「多くの重要な検証手段」で同国と合意したと発表、ライス国務長官北朝鮮のテロ支援国指定を解除したことを明らかにした。同国がテロ支援国のリストから外れるのは、1987年の大韓航空機爆破事件を機に翌年1月に指定されて以来20年ぶり。

今回、米国が北朝鮮をテロ支援国指定から解除したことに関して、日本に対する裏切り行為だと非難する意見がある。しかし私はこの意見に違和感を感じるのだ。米国が日本の頭ごなしに外交方針を変更することは昔からあった。たとえばニクソン時代の米中接近だ。キッシンジャー周恩来ラインによって急遽、米中国交正常化がなされ、当時台湾を正統政権と認めていた日本は面食らった。あわてて田中角栄が訪中し、日中国交正常化し、台湾とは断交した。

今回のテロ支援国指定解除も、米国の国益追求の一環であり、そこで日本の拉致問題よりも核問題が優先されただけである。ここで裏切り論が出てくるのだが、そもそも他国(第三国)に拉致問題解決へ大きな協力を求めるのはどうなのだろうか。たとえばの話、米国人がキューバに拉致されたとする。その時に日本国が積極的にキューバに拉致された米国人救出に立ち上がるだろうか? ほとんどの日本人は関心を示さないだろう。同様に、ほとんどの米国人にとって北朝鮮に拉致された日本人は関心外であると思う。それよりも経済問題やグルジア、イランの核開発、アフガンでのタリバン復活のほうが重要な問題だろう。

そもそも、拉致問題がそれほど重要なら日本人がなんとか自力で解決すべき問題ではないのか。米国人に言わせれば、そんなに救出したかったら自分のところの軍隊を使えばいいじゃないか、と言われるのがオチだ。そうなのだ。自分のところの軍隊(自衛隊)では救えずに、米国にすがりつく情けない国、日本。米国が外交方針を変更したら、裏切りだと非難するが、さりとて自衛隊の強化とかは全然考えない日本。

この問題はもう一度原点に立ち返るべきだと思う。拉致被害者を取り戻すのは我々の力でやるしかない。そして、本来ならばもっと早く、20年前にでもやっておくべきことだったのだ。それを政府もマスコミも黙殺し、社会党などは拉致問題はでっち上げなどと言っていた。北朝鮮が核開発する前に、拉致問題経済制裁をし、それでも被害者を帰さないのならば軍事行動を起こすべきだったのだ。「日本国民は、正義と秩序を基調とする国際平和を誠実に希求し、国権の発動たる戦争と、武力による威嚇又は武力の行使は、国際紛争を解決する手段としては、永久にこれを放棄する」。戦争を絶対悪だととらえ、なにがなんでも戦争だけはしてはいけないと固定観念で決めつけている限り、拉致問題は解決しないだろう。