宮武祭と芸能タレント通達

先日行われたアイドルユニットサマーフェスティバル2010でbump.y宮武祭(11歳)が午後8時までの出演だった。しかしそれ以降の時間も右のバルコニー席から身を乗りだしてステージ上のbump.yメンバーに爆レスしたり観客に手を振ったりしていたので、どの出演者よりも目立っていたのだが、年少者の深夜業についてあらためて調べてみた。

労働基準法では中学生以下の子は午後8時までしか使えない。では、松井珠理奈小川紗季は違法なのか? それは芸能タレント通達(光GENJI通達)を盾にクリアしている。これを使えば中学生以下の歌手でも深夜労働できる。しかし各芸能事務所やテレビ局は中学生は午後9時まで、18歳未満は午後10時までと自主規制している。だからスマイレージUSTREAMも午後9時で打ちきりにしているし、アイドルユニットサマーフェスも午後9時までにきっちり終わらせる。

この芸能タレント通達は解釈に曖昧なところがあり万能ではない。ホリプロ大森玲子が深夜ラジオに出演したときに事務所やラジオ局の関係者が書類送検されるという問題が起こった。

宮武祭も芸能タレント通達を盾に強行突破する方法もあったろうが、スウィートパワーニッポン放送も危ない橋を渡りたくなかったのだろう。最後の出演者全員登場の時に、宮武祭だけステージに上げなかった。

こういう法律や通達の解釈が曖昧な状態はよくない。深夜こどもが塾の通学でうろうろしている現状から見ると、歌手やタレントにだけ厳しくするのは奇異に思う。私は労働基準法を改正して、小学生は午後9時まで、中学生は午後10時まで、18歳未満は午後11時までと基準をはっきり明記すべきだと思う。

一定の条件を満たした芸能人は「労働者」に該当しないため前述の年齢を問わず深夜業が可能という、いわゆる「芸能タレント通達」(昭和63年7月30日、基収355号、別称:光GENJI通達)が出されている。
しかし、内容の解釈が個々によって異なって受け取れる可能性があり、それが実際に表面化した例として、一定の条件を満たしていないため「労働者に該当する」と当局に判断された当時15歳の女性タレント*1をラジオの深夜生放送に出演させたとして当時の所属事務所と放送局の関係者が1999年に書類送検となったケースがあり、それについて2000年4月13日に行われた特別委員会で見解が示されたことがあった。

  • 阪上委員 それではお聞きいたしますが、昨年十二月に、大手プロダクションのホリプロ所属のタレントが大阪の毎日放送に深夜出演したことで、大阪府警ホリプロ毎日放送の社員を労働基準法違反の疑いで書類送検をいたしております。ホリプロは摘発されてジャニーズ事務所は許されるというのはおかしいのではないかという声をよく聞きました。ジャニーズ事務所に対する報道がある以上、少年たちの教育的な見地から、事務所の実態調査を行い、必要な指導を行うべきではないかと思います。平成十年あるいは十一年に実態調査に入られたと聞いておりますが、その後の指導監督はいかがになっておりますか、お伺いをいたします。
  • 野寺政府参考人 昨年十二月、御指摘のホリプロの所属タレントが大阪毎日放送に出て深夜放送に出演したという件でございますけれども、これにつきましては、先ほど申しましたように、個々のタレントの契約の実態、内容、所得の課税の状況等々勘案いたしまして、労働者に該当するかという形で判断をするわけでございます。この場合には、いわば売り出し中といいますか、タレントもかなり名前が通って所得がふえてまいるような状況の方と、まだそこまで至っていないような状況の方がいらっしゃいますけれども、この場合は余り売り出しがまだできていないような方であったかと思います。したがいまして、労働基準法上の問題に抵触する可能性がございましたので、その観点から必要な指導を行い、的確にその是正が図られるように努めてまいっております。

演劇などへの13歳未満の子役の出演が、現在の午後8時までから午後9時までに延長されることになった。3日の坂口厚生労働相と鴻池特区担当相の会談で決着した。
年少者の労働を禁じている労働基準法の例外措置として、演劇や映画の分野では現在、午後8時までの活動が認められている。横浜市と日本演劇興行協会が構造改革特区の一つとして午後10時まで延長する「子役特区」を提案。鴻池担当相が「モーニング娘。特区」と名付け、実施を目指していた。
実施の方法について厚労省は「労働基準法の規制は全国一律であるべきで、特区にはなじまない」として、全国一律の規制緩和とする方針。「大臣が必要と認める場合」の特例措置で、法改正はしない。手続きが整い次第実施する。

子役の夜の労働時間の規定でも「例外」があるという。労働基準局が88年に出した通称「光GENJI通達」を満たすのなら、子役でも午後8時以降の就労までOKだというのだ。ではこの「光GENJI通達」とは、いったい何なのか。労働基準局監督課に聞いてみた。
「ははは、それはわれわれが『芸能タレント通達』と呼んでいるものですね。歌唱や演技が他人によって代わることができないなどの諸条件が満たされれば、労働者と認められず、労働基準法の午後8時条項には左右されることはないという通達です。確かにこれが、タレントや芸能人の労働に関しての基準となっています」
この「通達」によれば、

  1. 歌唱や演技など他人に代替できない才能を持っている。
  2. 給与とは違った形態での報酬がある。
  3. プロダクションなどの意向に左右されぬフリーな立場。
  4. 一般労働者のような雇用契約を結んでいない。

これらの条件を満たせば、15歳未満でも、午後8時以降、働くことができるという。しかし、「モーニング娘。」の所属事務所では、「『モーニング娘。』としての活動は午後9時までに自主規制している」とし、各テレビ局も、おしなべて15歳未満のタレントの活動は午後9時までという自主的な判断をとっている。

最低年齢

第56条
  1. 使用者は、児童が満15歳に達した日以後の最初の3月31日が終了するまで、これを使用してはならない。
  2. 前項の規定にかかわらず、別表第1第1号から第5号までに掲げる事業以外の事業に係る職業で、児童の健康及び福祉に有害でなく、かつその労働が軽易なものについては、行政官庁の許可を受けて、満13歳以上の児童をその者の修学時間外に使用することができる。映画の製作又は演劇の事業については、満13歳に満たない児童についても、同様とする。

深夜業

第61条
  1. 使用者は、満18歳に満たない者を午後10時から午前5時までの間において使用してはならない。ただし、交替制によつて使用する満16歳以上の男性については、この限りでない。
  2. 厚生労働大臣は、必要であると認める場合においては、前項の時刻を、地域又は期間を限つて、午後11時及び午前6時とすることができる。
  3. 交替制によつて労働させる事業については、行政官庁の許可を受けて、第1項の規定にかかわらず午後10時30分まで労働させ、又は前項の規定にかかわらず午前5時30分から労働させることができる。
  4. 前3項の規定は、第33条第1項の規定によつて労働時間を延長し、若しくは休日に労働させる場合又は別表第1第6号、第7号若しくは第13号に掲げる事業若しくは電話交換の業務については、適用しない。
  5. 第1項及び第2項の時刻は、第56条第2項の規定によつて使用する児童については、第1項の時刻は、午後8時及び午前5時とし、第2項の時刻は、午後9時及び午前6時とする。

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