ZONEは希有な存在だった

現在ご当地アイドルがブームらしくて、雨後の竹の子のように全国各地に出現している。その総てが全国区を目指しているわけではないが、仮に目指したとしても、地元の事務所に所属して、地元に住んだまま全国区になることは大変難しい。日本のアイドルグループの歴史を紐解いてみても、成功しているアイドルは皆、東京に引っ越している。たった一組、ZONEという例外を除いては。*1
ZONEとは奇跡的な存在だった。北海道で生活し、札幌の事務所・ランタイムに所属しながら、全国ツアーもやり、武道館単独公演も成し遂げた。NHK紅白歌合戦にも出場したし、CMにも7社出演した。なぜあれだけ成功したのだろうか。まず歌がよかった。町田紀彦氏制作の楽曲がよかった。そしてなにより長瀬実夕の歌がめちゃくちゃ上手かった。
当時、長瀬実夕當山奈央Buzy)、サントス・アンナBON-BON BLANCO)、竹輪春奈SweetS)、東郷祐佳(EARTH)、この辺りの子は傑出して歌が上手かった。偶然にも2000年代前半のアイドルシーンには、歌が上手い子が突然変異のようにたくさんいた。10年経って、2012年のアイドルシーンに歌が上手い子がほとんどいなくなってしまったのは残念である。しいてあげれば東京女子流の小西彩乃ちゃんと、℃-ute鈴木愛理ちゃんは抜きんでている方か。でもこの二人も長瀬実夕に比べれば、まだまだだと思う。
ZONEだけ例外だったので、全国区を目指すアイドルちゃんは、もれなく東京に引っ越してくる。地元のテレビに出演しても、それが全国に流れることはないからである。地方局が制作した番組が、全国ネットされることはほとんどない。だから全国区を目指すアイドルは、東京に出てこざるを得ない。
それはお笑いの分野でも同様である。大阪の吉本所属の芸人も、全国区を目指すなら東京に引っ越さざるを得ない。
それが如何に歪で異様なこの国のかたちであろうとも、そうシステムができあがっている以上そうせざるを得ない。テレビも雑誌も新聞も、東京からしか情報発信できないようになっているからだ。
私はどれだけご当地アイドルがブームになろうとも、冷めた目で見ている。この国のメディア構造を変えない限り、そんなものは一過性のブームに終わるだけだからだ。どれだけYouTubeUSTREAMが発達しようとも、それは興味を持った先鋭的な人が見るだけで、大衆の目に届かせるには、今でもテレビが一番有効である。そのテレビの編成権を東京キー局が握っている以上、ご当地アイドルなんてのも、地方から情報発信できないまま終わってしまうだろう。
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*1:SKE48は、メンバーは地元に住んでいるが、事務所は東京AKSで、なおかつAKB48という親の力を借りているのでここでは除外したい。